相場操縦行為とは、株式等の市場における価格形成を人為的にゆがめる行為で、刑事罰の対象となります。
金融商品取引法159条によって、内容が規定されています。
・第1項
有価証券等の売買等で、取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる等、取引の状況に関して他人に誤解を生じさせる目的をもって、以下の行為をしてはならない。
①仮装売買
②馴れ合い売買
・第2項
有価証券の売買等で、いずれかの取引を誘引する目的をもって、以下の行為をしてはならない。
①現実取引等による相場操縦(変動操作)
②市場操作情報の流布
③虚偽情報による相場操縦
④安定操作取引
①の、現実取引等による相場操縦は、株価をつり上げたい場合に、発注する意思がないのに大量発注をして買い注文が旺盛なようにみせて、それにつられた第三者が買いを多数入れてきたときに、高値で売り抜け、買い注文は取り消す(または指し値を大きく下げる)などの「見せ玉」などが代表的です。取引を誘引する目的が必要ですが、取引態様から推認されるものとされています。
伝統的な仕手筋による仕手戦では、狙った株価をつり上げるために、仕手銘柄であるとの噂が流れるなど、時間を掛けて相場操縦が行われていたところ、現在ではネット取引で瞬時に発注、取り消すことにより、デイトレーダー等一般市民によって、数分間や十分単位での短時間での相場操縦が容易になっています。
このような短期間での相場操縦は、痕跡が残りにくいですが、証券取引等監視委員会や、取引所においても、摘発をすべく装備が整えられており、平成25年6月24日にも、「ネット仕手筋」と呼ばれたデイトレーダーが、東証2部の株価を不当につり上げたとして株価操縦で逮捕される事件があり、また、大学の投資サークルによって行われた相場操縦で逮捕されたのが記憶に新しいところです(早稲田大学OB株価操縦事件)。この大学の投資サークルによる取引は、違法行為の開始から終了まで、2~3分しかかかっていないとのことです。
このように、かつては仕手筋といった「プロ」の投機筋が株価操縦の担い手であったのが、ネット取引の普及によりデイトレーダーといった一般個人投資家でも株価操縦ができるようになり、証券取引等監視委員会もこのようなデイトレーダーによるネット取引を通じた株価操縦行為には注視しています。
では、どこまでやれば株価操縦に該当してしまうのでしょうか。株を発注して取り消すだけで、見せ玉となるわけではありませんが、①自己の売付注文が約定した直後に買い注文を取り消す(あるいは指し値を大きく下げる)、②指し値の価格や発注の数量が、買い板をあつく見せかけ、他の投資家からの買いを誘う効果を有する、③行為を反復継続している④発注量が多い等の場合は、疑われる可能性があります。
株価操縦に該当する行為かどうかは、一義的には定まらず、発注量や場の状況、反復回数等総合考慮して判断する必要がありますので、金融庁から疑いが掛けられている場合などは、弁護士に相談して、今後の見通しについて相談することが望まれます。