外国証券には,外国株券,外国新株予約権証券,外債(外国債券),外国投資信託証券,外国投資証券,外国貸付債権信託受益権証券,海外CD,海外CP,外国カバーワラント,外国預託証券があります。
外国証券の取引には,国内の証券と同様に,価格変動リスクや信用リスク,流動性リスクがある以外に,為替リスクやカントリーリスクもあるので注意が必要です。
また,トラブルが生じた場合,裁判コストが多分にかかったり,裁判管轄が日本にないこともあり得ます。
外国債券
また,最近の事例として,外国債券の中でも,マイナーな通貨(トルコリラ,南アフリカランド,ブラジルレアル,インドネシアルピア,インドルピー,メキシコペソ等)建ての外国債を勧誘・販売されて,為替リスクや債券単価の変動リスクが顕在化し,多額の損失を被っている事例を多くみかけます。
これらのマイナーな通貨での外国債券は,国内やメジャーな通貨ではあり得ないような利回りの商品があり,このような表面利回りを勧誘文句に勧誘・販売されています。
また,これら外国債券に共通した勧誘方法として,いわゆるオリンピック需要をネタにしている点が挙げられます。しかしながら,これらマイナーな通貨の為替変動リスクは非常に高く,また政情不安や国内情勢によって価格変動リスクも非常に高くなっています。
表面利回りが良いということは,その裏返しとしてリスクが高いことを意味します。債券だから「安全,安心」というのは,これらマイナーな通貨の外国債券には当てはまりません。過去,アルゼンチン国債のように,国が「デフォルト宣言」をして,元本の返済が行われなくなった事例もあります。
外国株式
さらに,最近多く見られるのは,仕切り取引(店頭取引)の形で,外国株式を回転売買して,証券会社が手数料収入を挙げているケースがあります。仕切り取引の場合,証券会社が「売り手」となって,顧客である「買い手」に外国株式を販売します。
よって,証券会社としては,なるべく安く外国株式を仕入れて顧客に高く売ればそれだけ利益が上がります。取引所につなぐだけの委託取引であれば所定の委託手数料しか証券会社は上げられませんが,仕切り取引の形で,より多くの利益を上げることが可能となります。
外国株式の場合,株式固有の価格変動リスクだけでなく,為替リスクやカントリーリスクも伴います。最近の中国市場の活況を背景に,中国株(ただし,上場しているのは米国だったり,香港だったりします)の売買事例が多く見られますが,国内株式と違ってリスクが非常に高いことを肝に命じるべきです。
外国債券の判例
(1)香港の投資銀行が発行する格付けの低い債券の販売について,証券会社の販売体制に問題があったとして,証券会社経営陣の法的責任が認められた
(東京地裁平成15・2・27判決)
(2) アルゼンチン国債の販売に関して,証券会社が信用リスクの説明を十分に行わなかったとして説明義務違反を認めた
(大阪地裁平成16・7・14判決)
(3) ブラジル国債の販売に関して,証券会社担当者の説明が利回りの良さといった目先の利益誘導によって顧客を信用させ,リスクが顕在化しないかのような印象を与えて判断を誤らせるものであったとして,説明義務違反を認めた
(大阪地裁平成27・3・10判決)
(4) 豪ドル建ての外国債について,適合性原則違反を認めた
(福岡地裁平成27・3・20判決)
外国株式の判決
(1) 高齢の未亡人のIT関連外国株式の取引につき,外国株式を自主的に投資判断することができないとして,適合性原則違反を認めた
(東京地裁平成15・5・14判決)
(2) 統合失調症に罹患していた顧客に外国株式,仕組債を勧誘・販売した事例につき,適合性原則違反を認めて過失相殺なしで全面認容判決
(東京地裁平成24・8・3判決)*当事務所担当事件
(3) 南アフリカランド債や外国株式取引について,実質的な一任売買を認めて,不法行為の成立を認めた
(大阪地裁平成26・2・18判決)
(4) 中国株の勧誘・販売について,説明義務違反を認めた
(東京地裁平成27・7・17判決)
(5) 外国株式取引の勧誘・販売について,説明義務違反を認めた
(岡山地裁平成29・6・1判決)