証券会社などの金融機関は、適合性原則(顧客の意向や実情に沿った金融商品を勧誘する義務)を遵守する義務を負っており、取引開始時に作成される「総合取引口座開設申込書」などに顧客の属性(年齢、性別、職業、年収、金融資産の額、金融商品取引の経験、投資に関する意向など)をチェックして把握する仕組みを取っています。しかしながら、このチェックの仕組みが形骸化し、証券会社が顧客に買わせたい金融商品に合わせて、顧客の属性について虚偽の申告をさせるケースが多く見られます。
この虚偽の申告をさせる方法も、担当者が「こちらにつけておいて下さい。」とか「この欄はここにチェックして下さい。」等と誘導してチェックさせるパターン、口座開設時の書類は正しくチェックするが、その後訂正させる際に虚偽の申告をさせるパターン、後日訂正する際は担当者が顧客から聞いた話(聞いたと主張する話)に基づいて顧客の了解なく変更するパターンなどがあります。
いずれにしても、裁判になると、証券会社側は前記のチェックした書類を証拠として提出し、それに基づいて適合性原則違反等の違法はなかったと主張してきます。また、裁判所も、人の話よりも書類を信用する傾向にあるので、虚偽の申告であっても、記載内容を真実と認定してしまう可能性がありますので、注意を要します。